誠の華−ユウガオ−



如月も終わりに近づいた頃、新撰組改 甲陽鎮撫隊は甲府へ出発した。


また、置いていかれた。


「雪」


名前を呼ばれ振り返ると陽だまりの中、笑顔を浮かべた総司がいる。


骨ばった手をそっと握ると弱々しく握り返してくれた。


そうだ、今は一人じゃない。


少し寂しげな彼の横顔を見て胸が締め付けられる。


「総司、私がいるよ」


「…うん。それだけで僕には十分すぎる」


これ以上誰も犠牲になることがないように、と強く願った。


強く逞しい大きな背がどんどん遠ざかる。


また、みんなで笑えますように。


平凡だが願わずにはいられない、叶わぬ願いだった。


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