婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
早くどこかで横になりたい。

壁に手をつきながら息を整える。

そんな私の身体を支えながら、彼はトイレの横の洗面台に連れて行った。

「ほら、口ゆすいで、手洗って」

玲人君はまるで子供を相手にするように言って私の世話をする。

私が手にしていたナプキンで私の口を拭うと、彼はスマホを取り出してどこかに電話をかけた。

「小鳥遊さん、すみません。瑠璃が具合悪くて、俺の代わりに会食お願いします。それと……」

小鳥遊さんと喋っているが、頭が朦朧として全部聞き取れない。

通話を終えると、玲人君は私をまた抱き上げた。

抵抗する力なんてなくて、そのまま彼の胸に身を預ける。

そうしていると、身体が少し楽だった。

彼がいればもう大丈夫だって安心したからかもしれない。

薄暗い通路を進んでテーブルのある方へ戻れば、拓海さんが「こいつ、大丈夫か?」と玲人君に声をかけた。
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