婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
「栗田さん、会長の相手頼むよ。俺、会場のチェックがあってね」

小鳥遊さんが腕時計にチラリと目を向けながら私に声をかける。

「はい」

私が笑顔で返事をすると、小鳥遊さんはどこかに消えてしまった。

受付で立ち話をするにはお祖父様にも他の秘書さん達にも悪いと思い、お祖父様に「会場の様子、ご覧になりますか?」と提案してみた。

「ああ、そうさせてもらおう」

お祖父様は、私の目を見てにっこりと頷く。

杖をついて歩く彼の腕を支えながら、重厚な扉を開けて、会場に入った。

豪華な胡蝶蘭が置かれ、壇上には【九条ホールディングス創立百周年】の横断幕や紅白の花のリボンが飾られている。

ホテルのスタッフやうちの社員が慌ただしく動き回る様子をお祖父様は鋭い眼差しで見ていて、さすが財界のドンだなって思った。

椅子を見つけて、お祖父様に勧める。
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