【完】溺れるほどに愛してあげる


「あ!委員長からLINEY返ってきた!」

「なんてなんて?」





とっこが食い入るようにあたしのスマホ画面を覗きこむ。


『ありがとう。俺もそろそろ考えなきゃと思ってた』


そう一言だけ書かれていて、クラスのグループでも


『2学期には文化祭があります。することと準備まで夏休みにできたらと思っていますので良い案を持っている人は出してください』


そんなメッセージが送られていた。





「文化祭かぁ…何しよう」

「私は喫茶店したいけどな」

「喫茶店?」

「そ!可愛い衣装着てさ」





いいね、それ!

いいでしょ!


みたいな会話をする。


そっか。金田にも見てほしいな、なんて。


委員長の呼びかけにクラスの子が反応する。


『メイド喫茶!』

『男子はどうするのよ』

『厨房で作っとくよ』

『女装してメイドになりなよ』


とか


『お化け屋敷!』

『こんにゃくとか吊るしちゃう?』

『いいないいな!』

『他のクラスもお化け屋敷やるって聞いたような…』

『えぇーかぶっちゃうの嫌だな』


とか。


『普通に喫茶店は?』


あたし達と同じようなことを思う人いるんだな。


『あたしも喫茶店がいいな』

『それなら喫茶店にしようか!』

『衣装バラバラでもいいかな』

『女装いたら盛り上がるな』

『俺をお呼びかな?』


誰も呼んでないのに姿を現すお調子者の源田。


『おーやったら盛り上がるな!』

『やろうぜ、喫茶店!』

『準備とかしないとだな!
何がいるだろ?』


どんどんと決まっていく文化祭。


ああ…良い雰囲気。


体育祭の時も思ったけど、このクラスはみんなが同じ方向を向いて一致団結できる良いクラスだ。





「金田にも来てほしいな…」





そんなあたしの、自分でも意図していなかった呟きに過敏に反応するとっこ。





「誘ってみなよ」

「うん、言ってみる」





どうしても文字では伝えたくなくて、直接会って話したいと思ったあたしは即座に金田へメッセージを送る。


『話したいことがあるから会いたいんだけど…』


そして、すぐに返ってくる返事。


『は、待って。今すぐ行くからどこいるの』


すぐに返事できないかもとか言ってたくせにすぐ見てくれてるじゃん。





「金田くん?」

「うん」

「なんて?」

「今すぐ行くからどこいるのって」

「ほぉ〜お熱いねぇ〜」





ヒューヒューと茶化してくるとっこ。





「それじゃあお邪魔虫は退散しますっと」

「お邪魔虫なんて…!」





いつもよりテンションの高いとっこと共にカフェを出る。





「私にもLINEYちょうだいね!
遊ぼ!喋ろ!電話もしよーねー!」





大声でぶんぶんと手を振るとっこにあたしも大きく振り返す。





「お幸せにね!」





そう一言告げて、くるりと後ろを向く。


あたしはとっこの背中を見送り、見えなくなるとスマホを手に取って文字を打ち込む。


『駅前のカフェにいるよ』


すると、瞬時に既読になって


『わかった。すぐ行くからそこから一歩も動くなよ』


一歩も動くなって…あたしは子供じゃないんですけど。


大人しく待ってますよーっというように心の中でべーっと舌を出す。


カフェのウィンドウを背に金田を待つ。


返信が来てないか、やたらとスマホを気にして。

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