ひょっとして…から始まる恋は
私はそんな彼を見ると不意な涙に襲われそうになり、ぐっと奥歯を噛みしめる。

叶わなかった恋にきちんとサヨナラが出来なかったせいか、しんみりとした暗い気持ちで見守っていた。




「……保科さん」


トン…と肩を叩かれ、ドキッと心音が跳ね上がる。
ちらっと目線を向けると久保田君で、彼はひそっと話しかけてきた。



「さっきの話の真相を教えようか」


ボソボソとそう言いだし、私はその言葉に困惑する。

さっきの話というのは、多分藤田君の奥さんになる人のことだ。
タクシーの中では中途半端に後回しにされたことを思い出して、どうして今ここで話すの?と首を傾げた。


「知りたくなければ別にいいよ」


久保板君は無理強いはしないといった雰囲気で呟き、でも…と言葉を続ける。


「俺は保科さんの為に聞いて欲しいと思う。
今後も靖に気持ちを残さないようにする為には、話を聞いておいた方がいいと思うんだけど」


真面目そうな声で囁かれ、何だかとても気になってしまう。

私の為に…と思って話される内容を聞かずに知らん顔するなんて、そういうことも出来なくて__。


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