ひょっとして…から始まる恋は
呆れるような惚気話。

私はその話を聞きながらモニターを見つめ、新婦が新郎の手を取った瞬間に全てを納得して、目頭が熱くなってしまった。


彼女達は、私が全く知らないところでずっと想い合ってきた。

幼い頃から今のように手を取り合って歩き、その手をいつでも握れる場所にお互いの存在を感じていた。


藤田君が言うように、爪の手入れをして貰うだけで至福になれるのなら、今はどれだけ幸福で満ち足りた気分でいることだろう。


長い時間をかけて育んできたものが愛になるなら、もう何も望むことなんてないのではないか。


十分過ぎるほど幸せじゃないのか。
だからこそ、二人は輝いて見えるのではないか……。


涙をこぼしながら、二人の口づけを見守った。
不思議と嫌だと思う気持ちは湧かなくて、静かな幸せに満たされていた。


最初から藤田君の視界には入れる隙間はなかった。
それを教える為に久保田君は全てを打ち明けてくれた。

包み隠さず話してくれて、冗談交じりに藤田君のことを呆れていた。

それもこれも全部、私が藤田君に思いを残さなくてもいいように。

次の恋へと悔いなく踏み出していけるように__……



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