ひょっとして…から始まる恋は
その様子を窺うように見て、彼が伝えそびれてたことは何だろうかと考えた。



「……保科さん」


息が整った彼は真面目そうな顔つきで名前を呼び、こっちはビクッとなりながらも、はい…と返事をしてしまう。
彼は小さな笑みを浮かべて、少し私に近寄ってきた。


「……今朝、校門の前にいる君に向かって、ひょっとして…と声をかけたんだけど、実はあの前からこの場所にいて、君が来るのを待ってたんだ」


思わぬことを言いだす久保田君を見つめ、キョトンとしたまま、どうして?と訊ねた。

彼が此処にいた理由も不明だと思ったし、そもそも自分が高校へ寄ると何故彼が推測出来たのかも謎だった。


「高校時代にあれだけ靖のことを思っていた君なら、必ず此処へ寄るだろうなと思った。それで早目に来てたら会えるかな…と考えて、先回りして待ってたんだ」


勘が当たって良かったと笑う声に胸が少しだけ弾む。
久保田君は笑いを止めると私を見つめ直し、表情を引き締めてからこう言った。


「保科さんの気持ちが落ち着いてからでいいんだけど、いつかまた二人だけで会わない?

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