ひょっとして…から始まる恋は
私の声に悲しそうな目を向けてくる彼。
それを見るとキュン…として、少し切なくなりながらも声をかけた。


「私はまだ必ずしも久保田君のことを好きになれるとは言いきれないの。今日再会したばかりだし、これまでは話もあまりしてこなかったしね」


そう言うと、彼はそうだけど…と食い下がる。
だから私はそれを遮るように、あのね…と言い返して続けた。


「だから、取り敢えずはさっきのお礼をしたいんだけどいいかな?

二次会に戻るのがすこし遅くなっても構わないなら、二人でお茶でも飲みませんか?」


先ずはそこから始めてみよう。

ひょっとして…と声を掛け合った人と恋ができるかどうかは分からないけれど、今は彼の望み通り、私も彼と二人だけになってみたいと思うから。


「大賛成!…って言うか、もう二次会なんて帰る必要もないから、ゆっくり話そう!」


嬉しそうに声を弾ませる久保田君。
彼は私の引き出物の袋を持つと言って腕を伸ばしてきて、空っぽになった掌を私はぎゅと握りしめた。



「行こう」


声をかけられて足を踏みだす。

一歩先を歩く彼の背中を見遣りながら、未来に向けて淡い期待を膨らませた__。




FIN
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