【完】一ヶ月の恋人

詩羽に出会うまでは、死ぬのは怖くなかったんだ。
生きる意味を見出せなくて。
変わり映えのしない日々に、絶望していた。
自殺したって構わない、とすら思っていたよ。


でも詩羽と出会って、世界が180度変わって。
生きていたいと思うようになった。
もっと、色んな世界を見たいって思うようになった。
詩羽といろんな所へ出掛けたいって思った。


そう思うと、死ぬのが途端に怖くなった。
明日が来る確証がないってこんなにも怖いんだって。


日に日に自分の身体が衰えていくのが分かるんだ。
昨日まで出来ていたことができなくなっていく。
死に近づいていくのが見て取れた時、一番最初に浮かぶのは詩羽の事だった。


置いて行かれた後詩羽は?
詩羽は、生きていけるのだろうか。


もう一生、詩羽が僕の事しか好きにならない。
それは僕にとって死んでもかまわないほど嬉しいことだよ。
でも、この言葉で詩羽を縛り付けたくはない。


もし、僕以上に想う相手を見つけた時は。
迷うことなくその人と一緒になってほしい。


僕は絶対に詩羽の事を守ってあげられない。
一緒にいてあげられないから。
だからもしその時は、一緒にお墓参りに来て下さい。
来ないことを願っているけどね。


詩羽、君が好きだよ。
愛おしいと思う。愛しているんだ。
軽い意味じゃない。僕の一生分を乗せた告白だよ。
詩羽ともっといろんな所へ行って、もっと生きて。
結婚して、詩羽との子供が出来て、その子供が結婚して。
そういう未来を描いていきたかった。


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