初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
たった30分ほどの時間なのに、そわそわと落ち着きがなくなって。
緊張っていうか、期待っていうか、不安って言うか……

なにこれ。
私、まるで動物園のゴリラみたいじゃない。

「あーもうっ」

落ち着かない自分にも、そんな気持ちにも慣れてない。
頬を染めてその時間を待ち詫びている。なーんてこともできそうにない。
でもこんな自分もいたのかと新たな発見が少し嬉しい。
ただそれを客観視してる自分もいて、それが辛うじてブレーキをかけさせる。

その時間が長いようなあっという間のような不思議な時間の感覚。
無駄にスマホをいじってみたり、鏡を見て髪を整えてみたり。



―――ピンポーン


え?早くない?
まだ30分経ってないと思うんだけど?

「はい?」

スコープから覗いてみたけど知らない顔で、ドアチェーンをしたまま扉をそっとあける。

「あーすみません、遅い時間に。隣の佐藤ですけど」

一度も話した事もないお隣さん、私が引っ越してきたときにはすでにいたけどずっと留守だった。その人が今、なんだろ?

「明日の午前中の早い時間に工事はいるんでそれだけお伝えに」

「あ、そうなんですね、わざわざすみません」

少しうるさいかもしれないのでと言って帰っていった。
はぁ、慌てて損した。
っていうか、何の工事なんだろ?聞けばよかったかな。
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