初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
こうして腕の中に閉じ込められてしまえばあとは溶かされて。
温もりに包まれてしまえば、何も考えずにいられるから。


聞こえてくるその声を
目の前にいるその人を
すべてで感じて、身体に刻み込む。

先輩とこうしている事は嫌じゃないのに、
むしろ良いのに、なのに……


それなのにどうして。
目を閉じれば、彼の顔が瞼に浮かぶ。

「クルミ?」

呼ばれて、不意に意識を戻されてみると、上から心配そうにのぞきこむ顔。
それは紛れもなく先輩で、脳裏に浮かんだ彼ではない。

先輩にこんなにも想われていると感じているのに、私は。
何故、目を閉じると彼が浮かぶのか。

『今から迎えに行ってくる』と言った時、

今まで見たこともない目の輝きで、決意に満ちた顔をしてた。
その顔が、あまりにも強烈に私の中に刻み込まれて。

それは決して私に向けられたものではないのに。
この先もずっと私に向けられる事はないのに。

「クルミ、俺を見て?」

目の前のその人を見ているはずなのに、

「……、」

もう自分に嘘をつけない。
私を包み込んでくれるこの優しさにも
いつまでも甘えるわけには……
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