初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
結局押し切られるように、温泉に行く約束をしてしまったのだけれど、家に帰ってから、やっぱり後悔が襲ってくる。ダメなのに。これ以上先輩に甘えるわけにはいかないのに。


     *****

「ノリちゃん……」

『何、そんな悲愴な声だしてんのよ、クルミ』

自分では抱えきれなくなって、とうとうノリちゃんに電話してしまった。

「……うん、」

『うん、じゃわかんないわよ。電話じゃ顔も見えないんだから』

なんて言って切りだしたらいいのか。
今の状況を説明するには、どうしても坂下くんの話をしなければいけなくなる。

「そうなんだけど、」

『もうっ、クルミ。用事があるから電話してきたんでしょ?言わないなら切るわよ?』
「あーっ、待ってごめん。話すっ、話すからっ」

本当に切りそうな勢いのノリちゃんを慌てて止める。そして、

「とりあえず、怒らないで最後まで聞いてくれる?」

『怒んないわよっ、それにいつだって最後まで話聞いてるじゃない?』

いや、すでに怒ってるけど。
まぁ怒らせるような事、いつも言うのは私なんだけど。

「先輩と今度の休みに旅行行く事になったんだけど」

『へー、いいなぁ、ね、どこ行くの?』

「いや、それがよくないっていうか。行きたくないっていうか」

こんな言い方するからいつも怒られるんだ。
でも、他にどう話したらいいのか
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