初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「別に。無理に相手に合わせる必要なんてないだろ？」

相良さん。一応、先輩年上なんですけど。
そんなの関係ないって感じで、先輩に対して言葉を返す。
先輩の放った言葉は私に向けられていたはずなのに。

「無理、ね……」

相手に合わせるとか、そういうの。たぶん私たちの間では重要なキーワードで。
相良さんはそれも知ってるはずなのに。

「へぇ、潤季も言うねぇ」

しかもそれを煽るように大和さんが言うから、もう私はどうしたらいいかわかんない。

楽しく飲むはずじゃなかったのか。
ニコニコしてればいいからって言ったはずなのに。
そんな事ばかり頭の中で回って、自分の言わなければいけない言葉が全く思い浮かばない。

「せっかく楽しくしてんのに、飲めとか飲むなとかそういうんじゃないだろ？」

「……まぁ、そうだね」

相良さんの言葉に、意外にも静かに同意する先輩。

「それに。俺が、無理言ってクルミちゃんにここについてきてもらってんのに」

それは違う。楽しそうだ、そう思ったから私は……。
顔を上げて相良さんを見ると、ここで自分が口を開かない方がいいと知る。

「潤季って、ちょっと強引だもんねー」

「はは、強引って言うな。男らしいって言え」

「よく言うよー」

いつの間にか大和さんと二人軽口叩いて笑いあってる。

あれ？やっぱりこの二人はほんとに仲が良かったのか。
でもそのおかげで、この場の空気が少しだけ和らいだ気がする