初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「すみません、」

坂下くんが電話から戻ってきて、私たちの前に立ったままひどくあわてた様子でカバンを持った。

「坂下どうした?」

それを見た先輩が聞くと、やっと私たちに視線を合わせた坂下くんが、

「すみません、帰らないといけなくなって……」

誰からかはわからないけれど、その電話が原因だという事だけはわかる。
それにこの店に移動してからの坂下くんはどこか様子がおかしかった。

「そうか、気をつけてな」

「気をつけて」

急に私に視線を合わせてきたから、慌てて取り繕うように言ったけどおかしくなかっただろうか。
彼は数枚の御札を取り出そうとすると、先輩がそれを遮った。

「今度埋め合わせしますから。それでは失礼します」

丁寧に挨拶をすると、足早に店を出て行った。

「クルミも帰るか?」

「いえ」

今帰ったら、坂下くんの事ばかり考えて結局寝る事も出来ないだろう。
だったらここでお酒を飲んでいた方がいい。
それに今はまだここに居たかった。私を気遣って帰るかと聞いてくれた先輩の優しさにもう少しふれていたいから。

坂下くんの事考えてるのに、そんな風に思う私は随分とズルイ大人になってしまったのかもしれない
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