初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
もう少し一緒に居たい。そんな気持ちを言えないままお店を出た。

外に出ると来た時と同じように手を繋いでくれた相良さん。ポケットに入れてる分、いつもよりも距離は近い。

「ハァー、早く休みになんねーかな」

ポツリと呟いた相良さん。忙しくしていたから休みが待ち遠しいんだろう。

「来週でお休み、よね?」

「まぁそうだけど。っていうか、」

ポケットの中で繋がれていた手にキュッと力が入る。

「このまま家に持って帰りたい」

「へ?」

「すげー葛藤してる」

葛藤って言葉で、持って帰りたいモノが“何”なのかが思い当る。途端一気に顔に熱が集まって言葉に詰まる。

「はは、そんな警戒しないでも」

暗いのに私の顔が赤いのに気づいたんだろうか。

「警戒なんて……シテナイ」

今日会えただけでも嬉しいけど。もっと一緒に居たいって思ってたから。

「はは、そんな風に言ってもらえて嬉しいけど。でも―――」

でも?横に居る相良さんを見上げる。

「最初は色々と、ゆっくりしたいからな?」

見下ろす瞳が優しい。

「……最初って。」

そこまで言うのが精一杯で、嬉しいのとか恥ずかしいのとか、色んな気持ちが一度に混じり合う。

「というわけで、持って帰るのはあきらめて今日はクルミちゃん家寄ってい?」

「もちろん。」

早くぎゅってしたい。
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