初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
時計ないから、ともかく急いで体を洗ってすぐに浴槽に入る。

さっきヒノキのいい香りがするなんて思っていたのが嘘のように匂いなんて感じない。きっと史上最高に体洗うの早かったんじゃないかと思う。

――トントン。

控えめに叩かれたノックのあとすぐに浴室の扉が開く。

いや、そっち見ちゃダメ。だって、ここは浴室。だから当然相良さんは……。

「お。いい香りだな」

入口に背を向けてるから声しか聞こえない。お湯を流す音。そしてすぐに気配を感じて……

――チャプ。

それと同時にお湯の容量が増す。

「ハァー。これはヤバイな。うっかり声が出る」

いや、そうだけど。気持ちいいんだけど。うっかり声だって出ちゃうかもだけど。違う意味で!

「ん?クルミちゃん?」

「……はいっ」

「離れがたいんじゃなかったっけ?」

いや、そうだけど。そうだけど、違うっていうか。

うん、だって。ここは浴槽で。しかも裸で。ましてや、ベッドでもない。
だけど私のそんな思いなんて気にしない相良さんはスッと手を伸ばして私を引き寄せる。

「俺は一時も離れたくないよ」

彼の声も言葉も甘く。
いつもよりもさらに心に響く。

まだ朝じゃない。そう自分に言い聞かせてその言葉に答えるべく口付けを落とした。
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