眠り姫は夜を彷徨う
「へぇ。有名人…」

「うん。何で有名なのかは私も良くは知らないんだけどね」

紅葉は笑うと肩をすくめてみせた。


(確か格好良いから女子には特に人気だとか言っていた気もするけど…)

この情報源は勿論、例によってタカちゃんだったりする。

休み時間一緒に校内を歩いていた時に、先程のように彼に声を掛けられ普通に挨拶を返したら知り合いなのかと大いに驚かれ、何故だか妙に大興奮のタカちゃんから質問攻めにあったのだ。

その興奮具合といったら今までに見たことのない程のもので。初めてタカちゃんの『女の子』部分を垣間見たような気がした。

それでも私が彼について知っていることなんて元々何もなかったので、逆にタカちゃんから名前や学年なんかも教えて貰ったのだった。


「最近、よく会うんだ。校内でもそうだけど朝は決まってこの時間見かけてるかも…」

気が付けば自分の前を歩いていたり、今日みたいに後ろから声を掛けられたり。

きっと家を出る時刻が自分たちのように決まっているのだろう。だからタイミング良くここで毎日会うのだ。

「そうなんだ?でもそんな人と紅葉は、いったい何処で知り合ったの?」

再び並んで歩きながら圭ちゃんが不思議そうに聞いてくる。

「あー…うん…。前にね、保健室に行った時に偶然一緒になったっていうか…」

「保健室?」

「うん。ちょっと調子悪くて保健室で寝てたことがあったんだけど…。その時に目が覚めたら、さっきの桐生さんも保健室にいて少し話す機会があったんだ」

「調子悪かったって…。大丈夫だったの?」

圭ちゃんは途端に心配げに眉を下げた。
< 43 / 186 >

この作品をシェア

pagetop