眠り姫は夜を彷徨う
「時間も遅いし、あまり引き留めると悪いから単刀直入に聞くけど…。本宮くん、昨日予備校の帰り…真っ直ぐ家に帰ったかな?」

「え…。なん、で…そんなこと、聞くんですか…?」

明らかに動揺が走った。

(…ように見えるけど、まぁこれは、ある意味テンプレだよな)

実際に『掃除屋』とグルになって活動しているのなら、そう簡単には尻尾を現わせないだろう。

警戒の色を滲ませながらも、必死に平静を装っている如何にも無垢な少年に憐れみを感じつつ。立花は変わらず笑顔を向けた。

「じゃあ質問の仕方を変えるよ。昨日、一緒に自転車の後ろに乗せていた子は誰かな?」

「…っ!!」

「本宮くんが女の子を乗せて自転車を走らせているのを俺、見たんだよね」

「そ…れは…っ…」

可哀想に。目前の少年は一気に青褪めた表情を浮かべた。そんな彼に囁き掛けるように声を落とし、追い打ちをかける。

「彼女…。今世間で騒がれてる『掃除屋』らしいんだ。彼女を追い掛けていたら、君と彼女が一緒にいるのを見掛けてさ。もしかして、本宮くんは彼女の仲間…なのかな?」

そこまで言ったところで、急に彼は表情を変えた。

「…ちが、うっ!彼女は、掃除屋なんかじゃないっ!!」

「ちょっ…本宮くん、あんまり大きな声出すと…」

周囲に聞かれて困るのは君じゃないの?と続けたいところだったが、目前の彼はそれどころじゃない様子だ。逆に気になって辺りを見回すが、既に殆どの生徒たちは帰ってしまったのか周りに人はいなかった。

「そんなことをする理由がないんだっ。何で…あんな…っ…」

「………」
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