【完】それでもいいと思える恋だった。
そういう希美ちゃんの目元にはうっすらクマができていて。
申し訳ない気持ちと、嬉しい気持ちが半分ずつ。
心を埋めつくした。



「昨日、捺と会えた?」



「……来ませんでした。」



「は?伝言伝えたら走って教室出ていったのに?」



「そんなに会いたくなかったんですかね。」



「香織……。」



「暗い話はなしですよ!
 今は希美ちゃんの事だけ考えるんですから。」



「……よ~し、遊び倒すぞ!」



「はい!」



捺くんの事は考えない。
考えても、マイナス方向にしかいかないから。
苦しい思いしたくないから。
今だけ、忘れる。


希美ちゃんとお気に入りのお店でお揃いの服を買って。
今度会うときはこれ着て遊ぼうなんて約束をして。
よく行くカフェで奮発してふわふわショートケーキのセットを頼んで。
いつもより少し贅沢で。
いつもより笑って、いろんな話をして。


気付けば電車に乗る時間が迫っていて。
もう、お別れの時間だった。



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