この暴君、恋すると手に負えません


「口に出せないくらいやましい事をしていたのか?」

桐生さんは暫し言葉に詰まらせていたが、暴君を真っ直ぐに見つめて小声で呟いた。

「......大切な物を落としてしまったので探していました。部屋中探しても、ホテル側に問い合わせても見つからなかったので、ここで落としたのかもしれないと思って探しておりました」
「大切な物って何だよ?」

すると桐生さんはジャケットの内ポケットから白いハンカチを取り出した。そのハンカチをゆっくりめくり、中を見せながら桐生さんは何処か恥ずかしそうに顔を背けた。

中に包まれていた物を見て暴君は目を細めながら小さく笑った。


「......こんなのが大切なのかよ」


そう、それはいつも桐生さんがつけているブルーサファイアのピアスだった。ふと桐生さんの耳に視線を向けると、右側だけピアスが外れているのがみえる。



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