この暴君、恋すると手に負えません


唇が不意に離れた瞬間、暴君は悪戯に耳元で囁く。
その囁きに私は無意識に頷いてしまう。


そして気づいたら日が昇り始め、その朝焼けに照らされる美しい暴君に見惚れてしまう。


「虹美、命令だ」
「何ですか急に」


――この男は何をするにも何を言うにも突然過ぎる。
それに慣れつつある自分がいるのが少し悲しい。


しかし次に聞こえた暴君の言葉に私は一瞬息をするのを忘れてしまう。


「もう俺から離れるな、ずっと傍にいるんだ」


――ほら、またそういう甘い言葉で私を弄ぼうとする。

だから悔し紛れに私は悪態を吐いたのだった。


「……それは帝さん次第ですかね?」
「はは、やっぱ全然靡かねぇのな。そこもお前の魅力だが」
「そういうの平気で言えるのある意味尊敬します」
「そのお前の生意気な口を今すぐ塞いでやってもいいが?」
「なっ、何言ってるんですかっ!?」

私が慌てて口を塞ぐと、暴君は可笑しそうに喉を鳴らして笑う。
そのまま私の髪を優しく撫でて、暴君は背中を向けて歩き出す。

「ほら、戻るぞ」
「……分かってます」


そして私たちはまたあのスイートルームへの扉を開いたのだ。
それから何があったかは、言葉にするまでもないだろう。


だって暴君はあの時こう囁いたのだから――……。




”今度こそ、続きはあとでな?”




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