この暴君、恋すると手に負えません


「分かったら戻ってサインするんだな」
「......嫌です」

拒否権なんてないのは分かっていても、私にはどうしても許せない事があった。

この暴君はおばあちゃんの作ってくれた卵焼きを侮辱した。それは人として許せなかった。


"何だこれ、お前よくこんなの食えるな"


ふとあの時、暴君が言い捨てた台詞を思い出すと私は拳をぎゅっと握り締めた。

「......貴方が馬鹿にしてたあのお弁当は、私の祖母が作ったものです」
「何だよ?唐突に」
「貴方が食べたあの甘い卵焼きは私が一番好きなものだったのに、貴方は侮辱した。それが許せなくて感情的に叩いてしまいました」


すると暴君は眉間に深く皺を寄せた。



< 23 / 409 >

この作品をシェア

pagetop