七色セツナ。1




「藤谷くん……」


その女は、ヨロヨロと立ち上がり、


「私の家、そこのマンションなの……

めまいがするので、
そこまで送ってくれませんか?」


正直、面倒くさいという気持ちが
なかったわけではなかったが
目の前に体調が悪い奴がいて、
しかもマンションまでは
あと少しという距離だ。


「歩けるのか?」


「はい、すみません。

迷惑かけて」


そこで、おんぶしろとか、
抱っこしろと言われた訳でもないし
俺は、その女の家まで一緒に行った。


そこで帰ろうと
来た道を戻ろうとした時
玄関で、その女がよろけた。


「今の時間は、両親が居ないんです。

すみません、私の部屋まで……」


いい加減、面倒になった俺は


「どこだ?部屋」


と、女の腕を引っ張った。



< 31 / 318 >

この作品をシェア

pagetop