七色セツナ。1

side 蒼夜




side 蒼夜



「花凛、こっちに来い」


言い方は
ぶっきらぼうだが、
俺は恵衣の
こんな穏やかな
声を聞いたことがない。


恵衣は
自分の横に花凛ちゃんを座らせると
誰も見たことのない、困った顔をした。


「花凛...悪かったな」



は?

ーーー恵衣が謝った……

ウソだろ?

絶対君主の恵衣が……


あまりの衝撃に、
タバコの灰がポロっと落ちた。


「何がですか?」


「オマエに、嫌な思いをさせた……」


「嫌な思いなんて、してませんよ?

むしろ
私がお客様に迷惑を……」


「・・・花凛、右手を出せ」


花凛ちゃんが
右手をそろそろと差し出すと、
それを恵衣が
優しく掴み右手の甲を見る。


「チッ……

赤くなってやがる……」


「大したことないですよ?」


するとーーー


恵衣が、その手にキスを落としたーー



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