Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
(12) ふたりの王国

   
    「本当にありがとうございます、夫も感謝していました」
    「たいしたことじゃないもの、あなたの役に立てて嬉しいわ、
     クノエ。あなたにもトラビスにも、世話をかけっぱなしなのは、
     こちらなんだから」
    「とんでもないですわ、ミュアリス様」
    
    「やめてよ、”様” は、今はあなたの方が身分が上よ、
     クノエ=フォルテス=リード伯爵夫人。私は、貴族ですら
     ないんだもの」
    「いいえ、ミュアリス様はいつまでも、私のご主人様です。
     もし神に、” 夫か、ミュアリス様か選べ “ と言われたら、
     私は迷わず、ミュアリス様を選びますわ」
    「もう、クノエったら」



 眩しい初夏の日差しがさしこむヴェイニーの館の居間に明るい声があがる。



 いつもはジェイミーのおもちゃが、あちこちに転がっている居間は、
 今日はきれいにかたずけられ、リボンや花で美しく飾りつけられていた。


 ミュアは最後の仕上げにと、花嫁のもつブーケを作っているところだ。



 トラビスの遠縁の青年が、身分違いの娘との結婚を望み、仲の良いトラビスに
 相談をもちかけてきたため、トラビスが祭司や式場を手配しひそかに式を
 あげさせることにした、と聞いたのが一週間前。


 だが、式をおこなう予定だった町外れの聖堂が、反対する青年の身内に
 知れて、急遽(きゅうきょ)、新しい場所が必要だ、
 どうかヴェイニーの館の居間を貸してもらえないだろうかと、
 トラビスが昨日になって言ってきて、ヴェイニーと息子のジェイミーと
 三人で暮らすこの家が、式場ということになった。


 こんな普通の家で? とミュアは思ったが、祭司をつれてくるから場所は
 問題ないと言われ、リード家ではできないと言われれば、頷くより他ない。



 とにかく居間に簡単な祭壇をつくり、ヴェイニーが式の後のパーティー料理に
 腕をふるうと言い、せめて少しでも華やかにと、心をこめて居間を飾りつけた。




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