大切なものを選ぶこと



「あり?弘、寝てねーの?」






「高巳…お前、絶対わざとだろ…」





苦虫を噛み潰したような顔の秋庭さんと至極楽しそうなイケメンさん。





組の人たちと話す時の秋庭さんってこんな顔をするんだなぁ…と思った。





一通り秋庭さんをイジって満足したらしいイケメンさんは、私の方に向き直った。






「ね、うちの若頭、可愛いでしょ?」





「えっ…?あ、はいっ!」





「高巳!!」





否定してるけど秋庭さん…かなり可愛いですよ…。





それに、私のせいで昨日寝てないなんて…本当に申し訳ない…。





そう思っていると秋庭さんに優しく抱きしめられた。




小さい声で『俺が情けないだけだから気にしなくていい』と言われてしまったら頷くしかない…。







「付き合いたてでイチャイチャしたいのはわかるけどさー、俺たち帰っていいー?」





イケメンさんの呆れたような声で現実に戻った。





人前で秋庭さんに抱きしめられてるんだった…。







「弘が女にここまで骨抜きにされるとはねー。やるね美紅ちゃん。極道の男の愛は重いって相場が決まってるから気をつけなね」





綺麗にウインクをきめたイケメンさんは、同時にスキンヘッドさんに頭をはたかれた。







「ッてー…純さん、何すんですかー」





「さっきからお前がいらんことばっかり言うから話が進まねえんだろうが!!黙って弘さんの話を聞いとけ!」





「へいへい…純さん怖い…」





「なんか言ったか高巳?」





「いえ…なにも…」






イケメンさんとスキンヘッドさんのやり取りを見て、何となく二人の上下関係が見えてしまった。





でも…どう見てもスキンヘッドさんは秋庭さんよりも年上だし…




極道の世界の関係ってよくわからない…












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