王太子の揺るぎなき独占愛



 昨夜降った雨のせいか、森の中はしっとりと濡れ、空気は澄んでいた。
 木々の合間を揺れる日差しを楽しみながら、サヤは歩みを進める。
 幾分肌寒さを覚える秋の早朝は、まだ目覚めきっていない体がすっきりとし、その日一日を頑張ろうと思える心地よい時間だ。

 慣れた足取りで進むサヤは、背中の真ん中辺りまで伸びたピンクブロンドの髪を揺らしながら、森の奥へと入っていく。
 はっきりとした大きな瞳はキラキラ輝き、磁器のように滑らかな白い肌はほんのり赤味を帯び魅力的だ。
ほどよい厚みのある唇から洩れるかわいらしい声は弾んでいる。

「雨が降ったおかげでみんな生き生きしてるわね」

 森の中は手をかけて育てられている木々や草花で溢れている。
 あたりの美しさに心躍らせたサヤはその場でくるくると回り、クスクスと声を漏らした。



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