君のことは一ミリたりとも【完】
1 嫌いな女




どうしてあの日のことを今でも昨日のように思い出すのだろう。

高校の卒業式、桜が舞う空の下で一人で立ち尽くしている彼女を見掛けた。
今までにない焦燥感を抱えて見つめていると、彼女の横顔に一粒の涙が流れた。

周りの生徒は誰も彼女のことに気が付いていない。俺だけがその泣いている姿を目に焼き付けるように見ていた。
何故こんなに目が奪われるほどに魅せられてしまったのだろうか。周りの音が聞こえなくなるぐらいに全神経が彼女の涙に注がれた。

嫌いなはずだった。好きなはずがなかった。
彼女の頑固なところ、口の悪いところ、マイペースなところ、依存症なところ。その全てが気に障った。

なのにこんなに心が惹かれてしまうのは……


夢はいつもここで途絶える。





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