君のことは一ミリたりとも【完】
11 愛おしい君



これは俺の過去じゃない。彼女の過ちだ。
それでも事実が表に出て亜紀さんが悲しむのであれば、その罪を俺が肩代わりしてあげてもいい。

そうやって今までも生きてきたんだ。



片方の人差し指を差し出すと姫乃ちゃんはそのちぎりパンのような腕を伸ばして小さな手で俺の指に触れる。


「優麻ちゃん見て! 俺の指掴んだ!」

「そりゃ掴むよー。というか爽太くんってば30分前にも同じこと言ってなかった?」


興奮した様子の俺に対して冷めた表情を浮かべる優麻ちゃんに唇を尖らせる。こんなに小さくて愛らしい存在が普段から近くにいないのだから興奮するぐらい許してほしい。
休日に親友の家に入り浸るという傍迷惑な行動に出ている為強くは言えないのだが。

優麻ちゃんの美味しいお昼ご飯をいただいた後、ベッドで寝ていた姫乃ちゃんにちょっかいをかける。
ぷっくりと赤く腫れているほっぺたを突くと何だか楽しそうに笑い声を上げた。

お〜と勝手に一人で感動していると昼食の食器を片付けている優麻ちゃんが台所から意外そうな声を上げる。


「それにしても爽太くんが子供好きだなんて意外だなー」

「酷いな、俺をなんだと思ってるの」

「あはは、ごめん。だけどあんまりイメージになかったから」

「……」


確かに、俺も自分が子供を連れているところをイメージ出来ないかもしれない。
というか、俺が結婚して家庭を持つ、ということに対してそこまで意欲的ではないように思える。いつかその日は来るんだろうが酷く現実味が薄い。

そんな風に自分自身を客観視していると書斎に戻っていた聖がリビングのドアを開けた。

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