君のことは一ミリたりとも【完】
加奈ちゃんにも竹村同様に河田さんに対する気持ちの相談をした。
すると帰ってきたのはやはり竹村と同じような回答でウンザリする。
「だから違うんだって。本当そういうのじゃない」
「でもまるで思春期の男子みたいですよ、その人を前にすると悪口しか出てこないんですよね」
「思春期って、とっくの10年前にそんなの抜け出してますよ」
この歳になって思春期を拗らせるとか痛すぎて目も向けられない。
そもそも思春期を拗らせているのは俺よりも河田さんな気もするけど。好きな人間とそうじゃない人間の前では対応が違い過ぎる。
再びパスタをフォークで巻くと「えー」と加奈ちゃんから怪しむ目線を送られる。
「そもそも先輩って恋とかしたことあるんですか?」
「舐めてるでしょ、あるよ」
「いつですか?」
「んー、高校とか大学は普通の彼女いたよ」
「それって先輩から告白したんですか?」
「いや、向こうからだったかな。で、結局『何考えてるのか分からない』って言われて振られるかな」
俺は俺なりに自分の気持ちを相手に伝えていたつもりだったけど、それを分かってもらえることがなくて。彼女たちは一体俺の何が知りたかったのかと疑問に思うことがあった。
すると加奈ちゃんはサラダのプチトマトを口に含んだ後、頰を膨らませて言う。
「自分から人を好きになったこと無さそうですもん」
「んー、それは確かにないかも」
「爽太先輩って人の気持ちに鈍感だから多分自分の気持ちにも鈍感なんですよ。誰かに言われないと気が付かないタイプですよ」
「酷い言われようだな」