クールな社長の溺甘プロポーズ




「ちょっと、澤口!今週配信のVMD資料確認した!?セールリストもまだ来てないし、戦略データの共有もされてないんだけど!」

「は、はい!今すぐ確認します!」



窓の外には青い空が広がる、平日の午後。

広い室内に社員数十名分のデスクが縦数列に並べられたオフィスには、あちこちから声が飛び交い、さらには資料が舞い、ドタバタと忙しない。

私はその中でも一段と慌しく動き回る。



東京・港区品川の駅から徒歩10分ほどのところにある、大きなビル。

地上40階、地下4階建てのそのビルの11階から13階を占めているのは、【株式会社 ホールド】。

国内でも有名な、数多くのブランドを展開するアパレルブランドだ。



社員総数は店舗スタッフを含め3000名。

30種類あるブランドは、レディース・メンズ・キッズなど幅広く、全国300店舗を運営している。



その社内で、主力ブランドというにはまだ少し弱いけれど、近年成長率を伸ばしているブランド【スノードロップ】。

20代から40代と幅広い世代へ、デイリー使いのできる綺麗めファッションを提案するブランドだ。



そのブランドを運営するスノードロップ運営部という部署で、私、澤口星乃・28歳はブランドをまとめるチーフ補佐として働いている。



新作のデザイン確認、トレンドチェックと来期の戦略、売場戦略、セールの値引き計画、店舗チェックなど、常にチーフより先に把握しておかなければならないことばかり。

とにかくやることは山のようにあって、目が回るほど忙しい日々だ。



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