クールな社長の溺甘プロポーズ



「けど、そんな澤口のことを彼氏は大好きなんだもんねぇ」

「え?」

「だって、しょっちゅう朝晩送り迎えしてデート先まで決めてくれてるんでしょ?そんなの、愛がないと出来ないって。あーあ、うらやましい!」



愛……。

その言葉に少しときめきそうになってしまうけれど、いや違うとすぐ心の中で否定する。



大倉さんの中にあるのは愛じゃない。会社のことだけだ。勘違いするな、私。



「あっ、柳原チーフ!大変です、システムエラー発生で各店からクレームきてます!」

「えぇ!?本当!?ちょっと、澤口状況確認!大至急!」

「あっ、はいっ!」



話の途中、オフィスに駆け込んできた社員の声に、私は慌ただしく仕事に引き戻された。





そう。大倉さんが私にあれこれするのも、優しいことを言うのも、愛情なんかではない。

……けどそれでも、確かにそこまでしてくれているのだから、少しくらいは私も向き合うべきなのかもしれない。



彼がどんな人なのか。ほんの少しくらい、は。






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