ぎゅっと、隣で…… 
「秀二遅れるってさ…… これから奥さんに送ってもらうって」


 見覚えのある顔が、そう言いながら、南朋と同じテーブルに座った。


 奥さん?


 南朋はその意味が解らなかった。




「秀二の奥さん、めちゃ美人だよな……」


 別の男が当たり前のように言った。


 その言葉に、ようやく事を理解し始めた。


 南朋は胸がギュッと締め付けられるのと同時に目の周りが熱くなってきてしまった。



 南朋はその場にいられなくなり、宴会場を抜けると玄関のソファーに腰をおろした。



 奥さんが居るなんて聞いてない…… 

 騙された……


 ガタッと体の力が抜けていく……



 南朋が頭と心の中の混乱に耐えられなくなった時だった。 



「南朋ちゃん、行かないの?」


 秀二の声だ……
< 34 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop