星夜光、きみのメランコリー


鉛筆越しに、星野光を眺めていた。


細かい粉のようなその光を、ただぼうっと見つめていた。黒と白の世界だ。そう思いながら、目を細めた。


その時だった。突然、その視界に、1本の黒い影が入り込んできたのは。


ハッとした時には、さっき聞いたのと同じような、土を踏む音が聞こえて。
影を伝っていくと、さらに大きな影が視界に入る。


光に照らされたその夜空に、サラサラと、生ぬるい風になびくもの。

声もなく、ただそれを見つめていたら、横に伸びていた影から、何やらひと粒、黒が落ちてきた。



——ポタリ。


「……」


ポタリ、ポタリと続いて落ちてくるそれは、まるで時間を測っているかのように一定で。


じっと、思わず見入ってしまったけれど、それが時間でも雨でも涙でもないことに気づくまでに、あまり時間はかからなかった。



「——…ちょっと、」



気がつけば、その影に向けて声を発していた。そうせざるを得なかった、という方が正しいのかもしれない。


「ちょっと、それ」


黒だと思っていたもの。でも、どうやら黒ではないらしい。


—…分かりにくい、見えない。

でも、きっとおそらくそれは、赤。




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