きみだけに、この歌を歌うよ
「いやいや、大人っぽくていい感じだよぉ〜!私はすごく好きだなぁ、そういうシンプルなコーディネート!ねぇ、九条くんはどんな服装の女の子が好き?」
「なんでもいいよ。その子に似合ってれば」
「なんでもいいは答えになってないーっ!ね、私の服装は?どう?どう?」
つまんない。
……ふたりの会話にちっとも入れない。
「あっ、愁だ!愁~っ、こっちだよ!」
びくっ、と肩が弾む。
杏里ちゃんの視線の先を辿ると、こちらに向かって歩いてくる愁の姿が遠くに見えた。