きみだけに、この歌を歌うよ
「まぁ…毎日歩いてるもんね」
「いいな。通学路が桜並木って。ここは桜だけじゃなくて、海もあるし、綺麗な場所だよな」
「家から歩いて20分で学校行けるしね。最高だよ」
なんだかうまく笑えない。
せっかく九条くんとふたりで帰ってるというのに。
まったく会話に集中できない。
九条くんと話しながら、ぐるぐる頭を回っているのはやっぱりあのこと。
『告られたから断った。そしたら殴られた』
愁の、さっきのあの言葉。
そればかりが脳を巡って、離れてくれない。