千年前の約束を言われても、困ります



 やっとのことで家にたどり着く。
 だが、手が震えているせいかなかなか扉が開かない。


(やだやだ嘘でしょ…?! 誰か助けて…!!)


 私は尋常じゃない汗をかき、とうとう溜め込んでいた涙がこぼれた。
 フミさんは私が散歩に行っているのを知っているし、締りをするためまだ床につく時間ではない。鍵がかかっていることなどありえないことなのだ。
 扉を開けようと必死になっていると、右手首に何かが巻き付いた。違和感に目をやると、黒い弦のようなものであった。その瞬間、私はグルリと後ろに無理やり向かせられた。


「っっっ!!!」


 振り向いたそこには先ほど見たものたちの集合体だった。





 太古から人間を脅威に晒す化け物を人々はこう呼んだ。


――――“妖”、と。
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