蝶の羽ばたきで野原を守っちゃいます!
とすると、あの獣道みたいなのは川から上がった俺がつけた足跡か…?
あそこで力尽きて、滴った水で出来た水溜まりから俺はどういうわけか虫人になって出てきたわけだ。
うん。
まったく訳がわからない。
だが、ここが今まで暮らしていた世界なのは分かった。
鳶は俺がいろいろ考えている間にさらに高く飛翔していたらしい。
眼下に住宅地が広がり、少し離れてビル群がうっすらと見える。
「ピーヒョロロ!」
鳶は更に上昇し、先へと進む。
鋭く鳴き、翼を強く羽ばたいて、俺の住んでいた街から飛び去っていく。
河川敷でさえ五時間で100メートルしか進めなかったのに、もうその何100倍も離れてしまったようだ。
「………っ!」
じわっ
涙が溢れ、風にぬぐわれて行く。
あまりにも唐突にやって来た非現実。
充実していたわけではないが今まで暮らしていた街との別れ。
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