恋し、挑みし、闘へ乙女
「ええ」と言いながら暗さに慣れた目で屋敷を見回す。

この間は気付かなかったが、と乙女は豪華な化粧手摺の付いた階段やシャンデリアを見つめ感嘆の息を吐く。

「一見するだけで豪勢なお屋敷だと分かりますね」

あのシャンデリアを取り外して持って帰りたい、と乙女が羨ましげに見つめていると、「おいおい」と綾鷹が呆れ声で言う。

「窃盗の容疑で捉えるよ。邪な思いは抱かないことだ」

――なぜ分かったのだろう? 乙女はバツの悪そうな顔をしながらコホンと咳払いをして訊ねる。

「事件の後、隅から隅まで調べ尽くしたんですよね?」

「ああ」と答えながら綾鷹は乙女の手を取り、ポケットから小さなライトを取り出すと、「まず、君のいた二階の部屋に行こう」とそれを灯して階段を上がる。

部屋はこの前と変わりなかった。
だが、前回と違い、天上までの窓から燦々と陽が射していて中の様子がよく見て取れた。

「このソファーに寝かされていました」

あの時は真っ白いシーツが敷かれていた。だが、今日はジャガード織りの文様に添毛織りを加えた豪華なソファーが剥き出しになっていた。クリーニングしたらまだまだ現役で使えそうなほど美麗だ。

「敷かれていたシーツはこちらで押収した。調べたが何の痕跡も見つからなかった。あれは龍弥が君を埃から避けるために敷いたのだろう」

「君を思ってね」と綾鷹は忌々しそうに舌打ちをする。
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