恋し、挑みし、闘へ乙女
「いや、話の全てが眉唾ではないようだ」

「えっ!」と驚いた表情で乙女が綾鷹の袖を握る。

「ん……?」

綾鷹はシャツを握るその手を見つめ、クッと笑みを零した。

「もしかしたら、君、幽霊とか怖いの?」
「こっ、怖くなんてありません……よ」

だが、その言動は明らかに『怖い』と言っているのも同じだった。

「そうか、乙女の弱点は幽霊か。可愛いね」
「それ、褒め言葉に聞こえません! 私は単に幽霊が嫌いなだけです」

「妖怪なら大丈夫なのに……」と悔しそうに言い訳をする乙女の頬に、綾鷹が不意打ちのキスをする。

「本当に可愛いね。幽霊から私が守ってあげる」

「もう!」と言いながら乙女は綾鷹から離れると、「行きますよ!」とダイニングを出る。

「照れているの? 怒っているの?」とその背に綾鷹が笑いながら訊くが、乙女はズンズン先を行く。

だが昼間とはいえ、やはり窓のないところは薄暗い。次第に乙女の歩みはノロノロと遅くなり、やがて綾鷹の側にピタリとくっ付く。その肩に綾鷹の手が回る。

「だから、素直に怖いと言えばいいのに……」
「だから……もう!」

乙女の唇が蛸のように突き出る。
プンとそっぽを向く乙女に綾鷹が言う。
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