俺様社長に甘く奪われました

 三年前の傷は未だに莉々子の心の奥深くに根づいていて、一歩前に進もうとする足を容赦なく引っ張る。またつらい思いをする可能性のある恋に踏み出す勇気が持てない。


「俺とそいつを一緒にするな」


 鋭い視線で真っ直ぐに射抜かれドキッとする。


「で、ですが、社長も大企業のトップですから」


 それを跳ね除けるように返した。


「思うようになんでも手に入れられてきたことに変わりはないです」
「なんでも手には入れてない。むしろ手に入らないことのほうが多いくらいだ」
「そんなことはないです。庶民にはあんなマンションに住めないですし、高級車にも乗れません。自由になるお金もたくさんあって、好きなように生きてきた社長とは違うと思います。そんな社長と付き合って、また傷つきたくないんです」


 望月の顔に不意に陰が差す。どこか寂しそうな目は莉々子から逸らされた。
 ちょっと言い過ぎてしまったかもしれないと莉々子を後悔が襲うが、本当のことだと無理に思い直す。

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