ネコと教師

「だから、今後白石の悪い噂とか聞いたら、一番最初に教えてほしい」

「いつも言ってるぞ」

「いや、そうじゃなくって。要は、俺にだけ話して、広めるのはやめてやってくれないってんの」

多田は俺の必死の訴えを聞いて、なんか、けけけといつもの調子で笑った。

「なにそれ?いままでそんなん一度も言わなかったじゃん。急にどうしたよ」

「うん。ちょっと目覚めた」

多田は本格的に笑い始めた。

「目覚めたって。よりにもよって、あの白石かよ?布袋って面食いだな。ツラだけってのもどうかと思うけどよ」
「ああ、そうかも。別にこれは広めてくれていいよ。そんで、もうひとつ頼みがある」

「けどよ、大倉とヤっちゃってんだろ、白石って!」

「そ、それはいいから。……聞けよ」

「あいあい。なんすか」

多田はもはや爆笑していた。

俺はぐっと拳を握りしめ、もうからからに渇いた喉をどうにか動かして、その最後の告白をした。

「だから、さ。白石の噂してるバカがいたら、それも最初に、俺に教えてほしいんだよ。そういうの、ムカつくし、放っとけねえ」


そうして、すべて言い終えた俺は、さらに盛大に笑われたのだった。

< 41 / 75 >

この作品をシェア

pagetop