たとえばきみとキスするとか。
「……はあ。なんか実感、湧かないな……」
ただの独り言だったのに、地獄耳の零は過敏に反応する。
「実感って、なんのだよ」
またそうやって強い言い方。
「だから、零が私の彼氏になった実感がまったく湧いてこないなって言ったの!」
もう、今日だけは大声なんて出したくなかったのに、私もついムキになってしまう。
私が口を尖らせていると、零がまた露骨にため息をはく。
「じゃあ、どうしたら実感するんだよ」
零が歩いてた足を止めた。
どうしたら?そんなの聞かれても困る。
だって私、誰かと付き合うなんてはじめてだもん。
片想い履歴には実績があっても両想いになった経験はないし、私に彼氏ができるなんて想像もしたことはなかったから。
考えて、考えて、どうやったらこの両想いになったという気持ちを確かめられるのか考えた。
「た、たとえばキスするとか?」
言った瞬間に、すぐに私は我に返る。