たとえばきみとキスするとか。


……ああ、朝一番に蓮の顔を見られるなんて幸せ。

綺麗すぎる横顔につい見とれていると……。


「邪魔だ、どけ」


背後からキィィ……!というブレーキ音とともに浴びせられた低い声。私はムッとしながら振り向いた。


「ちょっと危ないでしょ!」

自転車の前輪は私のお尻をギリギリにして止まっていて、スカートが汚れたらどうするのって感じ。


「お前がぼけっとしてるからだろ」

「は?してないし!」

「まあまあ、ふたりとも落ち着いて」


蓮が苦笑いで、私たちの言い合いを制止した。蓮の前ではなるべく可愛くいたいのに〝コイツ〟に会うと私はついムキになってしまう。

わざと絡んできたくせに悪びれる様子もなく、自転車のペダルに足を乗せてそのまま走りだす。

そして、すれ違いざまに「チビ」と暴言を吐いていき、私はまたムカムカ……!と怒りがこみ上げてきた。


「ごめんね。悪気があるわけじゃないと思うんだけど」

「蓮が謝る必要はないよ。ってか〝零〟(れい)は私に対して悪気しかないよ!」


――早川零。

もうひとりの幼なじみであり、蓮とは二卵性の双子だ。

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