たとえばきみとキスするとか。


「えっと、その……1組の人に聞いたの!体育の授業の時に蓮がバスケットボールでケガしたって!」

とっさに嘘をついてしまった。

ごめん。蓮。でも本当のことなんて言えるわけない。


「そうなんだ。でも大したことないんだよ」

蓮は疑いもしないで、突き指した箇所を安心させるように動かしている。


「でも今日は私に洗い物させて」

「うーん。分かった。じゃあ、よろしくね」

ああ、なんかものすごく心苦しい気分。


そもそも私は巻き込まれた側なんだし、なんで蓮を誤魔化さなきゃいけないんだろう。

でも零の布団の中にいました、なんて口が裂けても言えないし、私にとっては記憶から消去したいぐらいの出来事なわけで。

……そっか。消去すればいいんだ!

もう、アレはなかったことにしよう。


「嘘つき」

ガンッと、泡のついた食器の横に飲みおわったコップを置く手。ハッと、確認すると零がまた意地悪な顔をしていた。


「……う、うるさい」

零となにかあると思われたく私は、ソファーにいる蓮に聞こえないように小声で返す。

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