クールな部長は溺甘旦那様!?
「キ、キスなんかして……」

「別に減るものじゃないだろう」

「そういう問題じゃないです!」

キーキーわめき散らす私に、剣持さんは辟易した様子で言った。

「まったく、これだから女は嫌いなんだ。面倒くさい」

もう、我慢の限界だった。頭の中で何かがブチンと切れる音がした。
甘い顔にホイホイついてきた私が一番悪いけれど、ここまでされるなんて馬鹿にするのもいい加減にして欲しい。私はその怒りを爆発させるように、飄々としている彼の頬めがけてバチーンと思い切りひっぱたいてやった。

「馬鹿!」

「ば、馬鹿?」

叩かれて横に向いた顔を私に向けると、何をするんだと言わんばかりに剣持さんは私を鋭く睨んだ。

「もういいです! 帰ります!」

ロイヤルスウィートなんてもうどうでもいい。早くこの場から、この最悪な男から逃れたかった。
私は剣持さんを睨み返すと、くるっと踵を返して廊下を足早に歩き、エレベーターに転がり込んだ――。
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