ただいま冷徹上司を調・教・中!
踊り場で私の足はピタリと止まる。

これが可能ならば、人の彼氏を寝取るのが趣味な女の鼻をへし折ることができるかもしれない。

これができるなら、あの大した取り柄もないくせに浮気だけは1人前にこなした男のプライドを粉砕できるかもしれない。

私にソレができるなら……だけれども。

誰もが羨むほどの高スペックの持ち主で。

誰もが見惚れるほどの容姿を持ち。

誰にも靡かない男らしい男。

……いるじゃないか。

私達三人の身近に完璧な男が。

あまりにも難攻不落すぎて、もはや誰もチャレンジしようとすらしなくなった男が。

私に残された道は一つだけ。

平嶋凱莉、35歳、独身、役職課長。

この高き壁を打ち破り、彼を手に入れるほか、私があの二人を完膚なきまでに叩きのめす術はない。

平嶋課長を落とす方法なんて何も思いつかないし、惑わせるだけの魅力がないのもわかってるけど。

私も女だ。

色気はないが、付いてるものは付いてるし、付いてないものは付いてない。

可能性はゼロではないはずだ。

まずは平嶋課長と親しくならないとお話にならない。

チャンスは週末の歓迎会だ。

苦手なタイプではあるが、確実に一歩づつ近づいていかなければ。

とにかく平嶋課長と人が羨む仲になればいい。

長期戦になるだろうけど、地道に関係を深めていこう。

私は小さな目標を心に決め、会社を後にした。

この時の私は、これから何が起きるかなんて、想像すらできなかった……。
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