誓約の成約要件は機密事項です
「どこも混んでいるようだから、ここにしようか」

西田は、チェーン店のコーヒーショップを選んだ。行きなれないホテルのラウンジなどに行かれても緊張するだけだから、どの街にでもある店は安心できる。

「ごめんね、最初がこんな店で。どこか予約しておけば良かったんだけど」

「いえ、大丈夫です。こちらこそ、お忙しいのにお時間作っていただいて……」

「いやいや」

西田は気さくに笑って、話しかけた。

初対面でも、緊張しないタイプなのだろう。場慣れしている気もした。

「相澤さんは、いつ入会したの?」

「二週間前です」

「え! それで、俺と会えたのか。ラッキーだな」

「私もそう思います」

「あ、バカにしただろ。俺、モテるんだよ」

「ふふ、そうだと思います」

すごい自信だとは思ったが、法螺だとは思わなかった。

公務員で、まだ30歳、見た目も悪くないとなれば、相当人気はあるだろう。結婚相談所からも、そう言われていた。

会ってすぐだが、話が途切れることもなく、雰囲気もいい。これなら、女性が放っておかないだろう。

結婚相談所に頼らなくても、すぐに彼女ができそうだ。仕事が忙しくて、出会いがないのだろうか。

こんな人に二人目で会えるなんて、西田の言う通りラッキーだ。

そう思っていたのは、そこまでだった。
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