誓約の成約要件は機密事項です
「まだ、入会したばかりだものね。そんなことより、今日は報告があります!」

あいまいな返事を気にもとめない母は、いつにも増して元気なようだ。

「自分から言うのは恥ずかしいって言うから、お母さんから伝えるわね。なんと、美千子が婚約しました!」

「えっ! お姉ちゃんが? おめでとう!」

「ふふっ、いいご縁は、後に残っていたのねー。そのうち、自分でも電話するって言ってたわ。結婚式は、春頃になるみたい。結納とかは、こっちでやっちゃうけど、お式は千帆も帰ってきなさいね」

「うん、もちろん」

「じゃあ、お母さん、他にも電話しなきゃいけないから、またね。体に気をつけるのよ」

「えっ」

詳しいことを聞けないまま、母の電話は切れてしまった。ちょっとそそっかしいところのある母なのだ。

――そっか。美千子お姉ちゃん、結婚するんだ。

美千子は、35歳の長女だ。

妹の千帆から見ると、しっかり者の自慢の姉だが、これまで独身を通してきた。千帆より10歳上なので、実家に暮らしているときに、姉に交際していた人が何名かいたのは、何となく分かっている。

その姉でも、結婚しようと本腰を入れてから、何年もがんばってきた。一人合わなかったくらいで、くじけるのは早すぎるだろう。

元気が戻ってきたところに、那央からメッセージが届いた。
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