報復の愛を君に。
「瀬奈は連れて帰ります」

「え?
壱にい待って…」

「話は後で聞くから」

それだけ言って、花岡を連れていってしまった。

俺が触れられなかった花岡の腕を引っ張って。

引き留めることなんてできるわけない。

どんどん距離が広がっていく。

べつに、嫉妬できる立場じゃねーけどな。

車のなかで思い出すのは、花岡と出会ってから今日までのこと。

誰だよ。
こいつの明るい笑顔の裏にある過去を知らないで『温かい家庭で、幸せに包まれて育った人間』なんて言ったのは。

誰だよ。
面白がって真っ暗な部屋に閉じ込めて、こいつのトラウマをよみがえらせた奴は。

どんなに自分を責めても責めきれない。
どんなに強く拳で足を殴っても、自己嫌悪は強まるばかり。

ろくな人間じゃねーな、俺。
なんであいつが苦しんでるのに、俺が好きに生きてこられたんだろう。

これじゃ、どれだけ頑張っても俺にはあいつの苦しさを理解してやることはできない。
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